2005年 11月 17日
遂に観ました。その3
こんばんわ。ProjectGCGのCG担当の飛鳥航です。
細々と写真を公開しています。よろしければ左のリンクからどうぞ。 さて、「ハウルの動く城」についてのレビューを皆さん書いていますが、僕はProjectGCGの画像・映像担当ということで、この映画における作画や演出、映像美についてちょっと語りたいと思います。 「ハウルの動く城」はファンタジーですので、実際にある地域を舞台にしているわけではありません。しかし、作品の中から大体の世界観を設定することができます。 ソフィーが暮らしていた町では蒸気機関車が走り、王宮がある都市では蒸気自動車も走っています。また、宮崎監督らしいどういった動力で動いているのかてんでわからない小型飛行機や、大型爆撃機、鋼鉄製戦艦が実用化されているところを見ると、産業革命後といった感があります。その一方で、魔法というものが政治的に大きな影響を及ぼし、戦争をする際の戦力として魔法使いが重要な役割を果たしていることがわかります。この世界では科学と魔法が共存している世界なのです。 世界観で気になったのが“戦争を外から表現している”ということです。憐悟が指摘していたように、この物語の主人公はハウルではなくソフィーであって、冒険活劇ではありません。今までの作品が少年漫画だとするならば、この作品は少女漫画に非常に近いでしょう。また、国と国とがかなりリアルな戦争をしているという点でもすごくびっくりしました。確かに「風の谷のナウシカ」では国同士の争いが描かれているといえますが、国同士が戦闘している場面というものは皆無といっていいでしょう。強いて言うなら大国同士の戦闘というよりは、ゲリラ戦・占領戦が描かれているわけです。そして、宮崎監督作品で絨毯爆撃をしている図なんてのは初めて見ました。破壊される民家、逃げ惑う人々、そこらあたりが妙に現実感あふれていて、ファンタジーとしての要素が薄れてやいないかという気がしてなりません。まぁ、それが悪いというわけではありませんが… 宮崎監督作品では「もののけ姫」からデジタル処理を導入しましたが、今回もしっかりと使われています。しかし、上記のように世界観がかなり現実感にあふれているので、摩訶不思議なものを表現するという点での使用はそれほど多くないと感じました。というのも、そもそもの問題として「千と千尋の神隠し」に見るような宮崎監督独特の世界観がこの作品の中には登場しないことがその使用を少なくしているのではないかと感じています。 一方で、サリマン先生との対決の際に空中で魔法が飛び交うシーンがありましたが、あそこがこの作品の中で一番デジタル処理の妙といった感じでした。あの浮遊感と茜がかった雲の精細さはデジタル処理でないとなかなか難しいでしょう。特に遠近感を出すためのスクロールを行っているので、手書きでは膨大な労力と計算が必要になります。また、ハウルの髪の毛がオレンジ→紫→黒になるグラデーションも、セル画の場合は一体どれだけの色見本が必要なんだといわんばかりの綺麗さ。こういった点ではデジタル処理は非常に便利ですね。 しかし、その弊害というものもありまして、始めのほうの群集シーンでデジタルらしい動きをループするカットがあり、とても安っぽかった感に苛まれました。劇場版なんだから手を抜いちゃだめだよ。ただ、少なくとも日本のハイレベルな(まがいなりにもアカデミー受賞スタッフの製作した)アニメですので、外国人受けはいいのではないでしょうか。全体的に宮崎監督の特徴が薄い作品なので、日本のほかのアニメ会社(Production I.G.とか)に作らせたらもっと面白い絵がとれたかもしれませんね。思うに、元ネタが宮崎監督にとって不適切だったと言いたい。
by projectgcg
| 2005-11-17 23:44
| ProjectGCG
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